特定医療法人 自由会 こうなんクリニック在宅療養支援診療所

在宅医療の現場

定期訪問診療など在宅医療に携わっている、こうなんクリニック副院長・松尾医師に現場の様子や「医師としての想い」そして「これから」など、話を聞きました。

松尾則行 医師
Matsuo Noriyuki

岡山大学医学部卒
現在、こうなんクリニック副院長

定期訪問診察では、実際にどのようなことをされているのでしょうか。

慢性疾患を抱えながら基本的には状態が落ち着いておられる方が、ご自宅や施設で安心して過ごせるように、定期的に(基本的には月2回)伺って医療面からのケアを行っています。ご本人やご家族・職員の方から身体の様子をお聞きし、血圧・脈拍・体温などのバイタル測定および全身の診察を行います。さらに適宜採血や検尿を、必要があれば心電図測定を行うこともあります。治療が必要な場合、ご自宅や施設で可能な範囲内で投薬や点滴治療を行いますが、より詳しい検査や治療が必要と判断した場合は、後方支援病院に紹介することもあります。定期訪問診療以外に、急に具合が悪くなった場合でも「臨時往診」として24時間体制で対応しています。訪問先は現在9割弱が施設(有料老人ホーム・グループホーム・ケアハウスなど)で、残りの1割強がご自宅となっています。

先生は以前、急性期の現場にいたそうですが、今の在宅医療に変わってどうですか。

急性期病院では、内科診療が中心でしたが、多種多様の病気や様態、検査・治療を経験しました。その経験をもとに、訪問先で診療対応しています。訪問診療では、診察や検査結果をみて、その場の自分の対応で事足りるのか、あるいは病院に紹介しないといけない状態なのかの判断が求められます。その判断を下す礎となっているのが、急性期での経験です。そういう経験が無ければ、在宅医療はできないのではないかと思っています。

在宅医療の現場に移って、良かったと思うことはありますか。

急性期だと、生命を助ける・病気を治すというふうに、どうしても医療中心になります。ですが、ご自宅や施設で生活されている方は、ある程度状態が安定しておられますので、医療面だけでなく、看護や介護の面、家族の方との連携といった面も大きく関係してきます。特にご自宅にお伺いする場合、ご本人さんが休まれている家の奥の方まで入って行くこともあります。普通は、他人をそこまで家の中にいれることはないですよね。信頼していただいているのを感じるし、逆にその信頼にこたえる責任とプレッシャーも感じます。患者さんやご家族の方とじっくりと関わって、作り上げていく信頼関係というのでしょうか、在宅医療はそういうところが最も必要とされる分野だと思います。だから、急性期の時のように患者さんを身体的な面からだけでなく、人間関係も含めた全人的な視点から診るように心がけています。そういう視点に気づけたのは、在宅に関わったからだと思うし、良かったと思う点かもしれません。

どんな時にやりがいを感じますか。

訪問に伺う方は、高血圧や糖尿病といった慢性疾患が多く基本的に病状がおちついておられる方が多いです。自宅や施設で日々平穏に過ごしていただけるのを目標としていますので、「おかげさまで、どうもないよ。」とか、笑顔をいただいたりすると、やはりうれしいですよね。私としてはそれだけでも十分、満足感は得られます。クリニックは24時間対応しているので、時間外に臨時往診の依頼も度々あります。しかし、頼りにされている、必要とされている、何とかしてあげなければという使命感・責任感、そういうところにやりがいはあると思います。医師としてどこに重きを置くかにもよると思うのですが、在宅医療にかかわる前に自分を見つめなおしてみる時間があってもいいと思います。

チームワークとしての在宅医療

実際に定期訪問診療を行っていくうえで、
医師を看護師のチームワークはいかがですか。

病状や全身状態の把握など診察・治療はもちろん医師である私たちがやりますが、採血や点滴は看護師さんの方がはるかに上手いですし(笑)、患者さんや家族の方とのコミュニケーションも含めて、それぞれ役割をもって、全体として患者さんをしっかりケアできたらと思います。うちのクリニックは医師も看護師も事務方も非常に仲が良く、十分にコミュニケーションを図っています。なかが落ち着いていないと、患者さんをしっかりケアすることはできませんものね。

もし患者さんが「耳が痛い」など専門外のことを訴えたら。

自分の限界、ここまでは出来るけどこれ以上は無理っていうラインがあります。だから他科的にどうしても自分の手に負えない・分からないという時は、紹介をして、専門の先生に診ていただくという形をとっています。往診してくださる先生もおられますが、受診していただく場合にはご家族の方に負担をかける結果になります。しかし、分からないからと無責任な対応をするのではなく、受診して早期に的確に治療してもらうほうが、ご本人にとっても望ましいことではないかと私は考えています。急変されたり、命に関わるような重篤な場合も同じで、すぐに急性期病院で治療を受けられるよう手配します(ご自宅や施設での看取りを希望されている場合はその限りではありません)。私らが在宅医療ができるのも、困った時には対応してくださる地域の専門医や、後方支援病院のご協力があるからです。病診連携・診診連携の重要さを日々実感しています。

今後の課題はありますか。またやっていきたい事など。

現在、マンパワーが十分とは言えないので、残念ながら新規の往診依頼に十分お応えできていない状態です。今は当クリニックで担当させていただいている患者さんの診療を充実させ、満足度をあげられるように、しっかり向き合っていきたいと思っているところです。もし、ご協力していただける先生がおられれば、もっと一人一人とお話をする時間的余裕も生まれてくると思います。時間をかけるのがいいという訳ではありませんが、時間を経ないとできてこない信頼関係というようなもの、そこを大切にしていきたいですね。