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医師インタビュー

定期訪問診療など在宅医療に携わっている当クリニックの松尾医師と橋本医師に、現場の様子や「医師としての想い」「在宅医療という仕事」について伺いました。

松尾 則行医師
Matsuo Noriyuki
橋本 健二医師
Hashimoto Kenji

定期訪問診察では、実際にどのようなことをされているのでしょうか?

松尾

慢性疾患を抱えている患者さんを月2回ほど訪問し、ご本人やご家族・職員の方から身体の様子をお聞きしたり、血圧・脈拍・体温などのバイタル測定および全身の診察をしてます。採血や検尿、心電図測定などの検査や、治療が必要な場合は投薬や点滴治療を行うこともあります。

橋本

慢性疾患の患者さんの場合は、上記のような対応を行っています。私は看取りを含めたがん末期患者さんの担当をすることが多いので、症状を緩和する治療を中心に診療します。痛み、呼吸が苦しい、だるい、不安、寝れないなどいろんな症状の訴えがあります。緩和医療については在宅でも病院と遜色ない対応が可能です。必要時は検査(血液検査、尿検査、超音波検査、レントゲン、培養検査など)を行い、内服薬、座薬、貼付薬、点滴治療などより楽になるために治療を行います。

以前の病院勤務から在宅医療の仕事に変わってどうですか?

松尾

以前は急性期病院に勤務していました。内科診療が中心でしたが、多種多様の病気や様態、検査・治療を経験しました。その経験をもとに、訪問先で診療対応しています。訪問診療では、診察や検査結果をみて、その場の自分の対応で事足りるのか、あるいは病院に紹介しないといけない状態なのかの判断が求められます。その判断を下す礎となっているのが、急性期での経験です。そういう経験が無ければ、在宅医療はできないのではないかと思っています。

橋本

私も急性期病院で救急医療、最先端の抗癌剤治療や内視鏡治療に携わっていました。消化器内科出身ですので、以前からがん末期患者さんとは多く関わっていました。ほとんどの方は自分を頼ってくれて病院で最期まで過ごされますが、中には自宅で最期を迎えたいといわれる方もおられました。在宅医がおらず、断念した方もおられます。現在、自分が在宅側でサポートをすることができ、非常にやりがいを感じています。

在宅医療の現場に移って、良かったと思うことはありますか?

松尾

急性期だと、生命を助ける・病気を治すというふうに、どうしても医療中心になります。ですが、ご自宅や施設で生活されている方は、ある程度状態が安定しておられますので、医療面だけでなく、看護や介護の面、家族の方との連携といった面も大きく関係してきます。特にご自宅にお伺いする場合、ご本人さんが休まれている家の奥の方まで入って行くこともあります。普通は、他人をそこまで家の中にいれることはないですよね。信頼していただいているのを感じるし、逆にその信頼にこたえる責任とプレッシャーも感じます。患者さんやご家族の方とじっくりと関わって、作り上げていく信頼関係というのでしょうか、在宅医療はそういうところが最も必要とされる分野だと思います。だから、急性期の時のように患者さんを身体的な面からだけでなく、人間関係も含めた全人的な視点から診るように心がけています。そういう視点に気づけたのは、在宅に関わったからだと思うし、良かったと思う点かもしれません。

心がけていることはありますか?

橋本

在宅で看取りをする時に一番心がけていることは、人生の最期の主治医として「橋本が担当でよかった」と思ってもらうことです。亡くなる瞬間まで頼りにされたいし、遺族が家で看取りをしたことを後悔しないようにしたい、それが全てです。そのために話をしっかり聞く、同じ目線で話すようにする、とか態度として注意していることは多々ありますが、結局は人として自分を好きになってもらいたいと思っています。人生の最期が気に入らない医者にみてもらうって辛いですよね。そうは絶対にならないように意識をしています。
在宅医療は、本当にいろいろなサポートがあるとは思いますがやはり結局家族がある程度の介護負担を担わなければなりません。しかし介護者が疲れ果ててしまうと在宅医療は成り立たなくなります。そのため、その負担を減らすようにお手伝いするのも我々の仕事と思っています。ケアマネジャー、看護師、薬剤師、介護士、福祉用具担当者などと相談しながら、こんな方法がありますよ、など説明するようにしています。

どんな時にやりがいを感じますか?

松尾

私が訪問に伺う方は、高血圧や糖尿病といった慢性疾患が多く基本的に病状がおちついておられる方が多いです。自宅や施設で日々平穏に過ごしていただけるのを目標としていますので、「おかげさまで、どうもないよ。」とか、笑顔をいただいたりすると、やはりうれしいですよね。私としてはそれだけでも十分、満足感は得られます。クリニックは24時間対応しているので、時間外に臨時往診の依頼も度々あります。しかし、頼りにされている、必要とされている、何とかしてあげなければという使命感・責任感、そういうところにやりがいはあると思います。医師としてどこに重きを置くかにもよると思うのですが、在宅医療にかかわる前に自分を見つめなおしてみる時間があってもいいと思います。

在宅医療の仕事はどんな人に向いていますか?

橋本

人と接するのが好きでない人は結構大変と思います。医療従事者としての技術はもちろん向上し続ける姿勢は大切ですが、コミュニケーション能力が一番必要だと思います。利用者さん、患者さんのお宅に入らせてもらって場合によっては一対一の関係になります。適度に寄り添い、傾聴、共感ができ、一緒に歩んでいけるタイプの人が適していると思います。ただ私もそうでしたが、やってみないとわからないこともあります。急性期病院から在宅医療にうつるときは不安もありました。気に入られなかったらどうしようとか、やりがいを感じれるかどうか、など。でも在宅医療を経験すればどの職種も非常に視野が広がると思います。ぜひ一度経験してほしいと思っています。

仕事はきついですか?

橋本

医師に関していうと急性期病院の時とさほど変わりはないです。24時間の呼び出しが確かに大変ではありますが、病院勤務でも同じですし。完全に休みとなることは少ないですが、当番制もしいていますので必要時に学会や旅行に行くことは可能です。大変さよりもやりがいが上ですね。

医師と看護師のチームワークや地域との連携はいかがですか?

松尾

病状や全身状態の把握など診察・治療はもちろん医師である私たちがやりますが、採血や点滴は看護師さんの方がはるかに上手いですし(笑)、患者さんや家族の方とのコミュニケーションも含めて、それぞれ役割をもって、全体として患者さんをしっかりケアできたらと思います。うちのクリニックは医師も看護師も事務方も非常に仲が良く、十分にコミュニケーションを図っています。なかが落ち着いていないと、患者さんをしっかりケアすることはできませんものね。
また、専門外の症状を訴えられた場合は、専門医の先生や地域の病院を紹介します。私らが在宅医療ができるのも、困った時には対応してくださる地域の専門医や、後方支援病院のご協力があるからです。病診連携・診診連携の重要さを日々実感しています。

今後の課題はありますか?またやっていきたい事など。

橋本

この地域で頼られる一番レベルを保ち、地域を引っ張っていける在宅医療のチームを作っていきたいと思います。在宅で過ごしたいという希望があるのに、医者がいないから帰れないという状況は無くします。この数年間、距離以外の理由で紹介はお断りしておりません。今後は、ご家族・遺族の精神的負担や辛さを減らすにはどうすればいいか、グリーフケア、遺族ケアなど精神的サポートもできるようにして、地域包括ケア(地域の住民、町内会、民生委員などと医療介護が連携して行うケア)の中での役割を意識しながら活動をしていく予定です。